研究開発
RESEARCH AND DEVELOPMENT
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子宮頸がんは、子宮頸部の基底細胞にヒトパピローマウイルス(HPV)16 型、18 型、31 型、33 型、35 型、45 型、52 型、 58 型などの14種類のHPVサブタイプが、長期間にわたり感染することで発症します。まず、HPV持続感染により子宮頸部に異形成(子宮頸部上皮内腫瘍)が生じ、さらに多くは10 年以上の期間をかけて子宮頸がんに進行します。子宮頸がんの前段階である子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)は、進展状態によって CIN1から3に分類されます。CIN3に進展している場合には手術によって部分切除となりますが、CIN1または CIN2の状態においては治療方法がなく、CIN3もしくは子宮頸がんに進展するまで待機(経過観察)せざるを得ないことが現状の課題です。子宮頸がんの罹患者数は、国内で年間約 1 万人、死亡数は約 3 千人ですが、CIN2および3 の罹患者数は国内年間約 15 万人です。治療法が確立されていない現状は、多くの女性にとって深刻な状況であると認識しています。
現在、子宮頸部上皮内腫瘍(CIN)に対する薬事承認された治療薬はありません。
HPV感染の予防目的で、性的活動前の若年女性に投与するHPVワクチン(ガーダシル等) が承認されています。
子宮頸部上皮内腫瘍軽度(CIN1)・中等度(CIN2)に対しては経過観察が行われ、高度(CIN3)に対しては、多くの場合、子宮を温存しながら頸部の異常部分を円錐状に切除する「円錐切除」が行われますが、円錐切除は早産リスクが上昇するなどの課題があります。
当社治療薬は、子宮頸部に直接的に作用が期待される膣錠であり、処方薬としてCIN患者自身によってCIN での手術が必要となる状態の前の段階に投与され、感染患部でのHPV複製を制御し異形成組織を修復することを想定しております。これにより、子宮頸がんへの進展を防止することを目的としています。すでに日本と韓国で治験が開始されており、高い安全性と共に、CIN2と診断された患者でかつ投与直前の子宮頸部の細胞診にて「異常」と判断された被験者において、28日間の投与後の組織改善の効果が診られています。手術以外の方法がなかったCIN への治療薬の確立を目指すことに社会的な価値があると考えています。
当社の治療薬(膣錠)は、特許が出願されており、すでに日本・欧州・中国・台湾・南アメリカで特許が登録されており、米国などの他の国にても登録に向けた審査が行われています。
ウイルス性のイボは疣贅(ゆうぜい)ともいわれ、その原因となるのは、DNAウイルスの一種であるヒトパピローマウイルス(HPV)です。皮膚の微小なキズなどからHPVが侵入して皮膚の角化細胞に感染します。感染した角化細胞は分裂速度が速まるため、その部分の表皮が肥厚してイボになります。よく手や足、顔にできるイボは尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)といわれ、ヒトパピローマウイルス2型・27型・57型の感染により発症します。すべての年齢層に発症しますが、とくに子供にできやすく、どんどん増えてしまう場合があります。
液体窒素を用いる冷凍凝固法(外科的)が中心の治療法で痛みを伴うとともに、ウイルスの除去がしにくく、長期の治療期間を要する場合があります。効果的な抗ウイルス薬は存在していません。
当社治療薬は、尋常性疣贅に直接作用しHPVの増殖抑制とイボ組織の修復が期待できる軟膏剤です。すでに日本において治験が開始されており、84日間1日2回の投与にて、高い安全性と、長径が4.4㎜以下の尋常性疣贅(イボ)に対して、プラセボ(偽薬)軟膏剤と比して、5%軟膏剤において統計的有意にイボ面積の減少が確認されています。本治療薬では、日本における共同開発と商業化を、岩城製薬株式会社と提携しております。前述の液体窒素による患部組織破壊的な治療法などに比べ、痛みのない処方薬として安全に治療が目指せる医薬品として一日でも早い承認を目指してまいります。
当社の治療薬(軟膏剤)は、特許が出願されており、すでに日本で特許が登録されており、米国などの世界各国にても審査が開始される予定です。
尖圭コンジローマはヒトパピローマウイルス(HPV6型・11型)の感染により性器・肛門周辺に発症するトサカ状、カリフラワー状のイボです。性行為やサウナ・公衆浴場などで感染します。一般に痛みや痒みはありませんが、新たなイボを形成・増殖しやすく、かつ治療しても再発を繰り返すことが多い疾患です。
外用薬、凍結療法、レーザー治療などが用いられるが再発をするケースも多いことが知られています。外用薬としては免疫賦活剤であるイミキモドが処方されることが多いですが、塗布周辺の強い炎症を引き起こすことが知られています。疣贅と同様に安全で効果的な抗ウイルス薬が求められています。
流行性角結膜炎(EKC)は、アデノウイルス8型、19型、37型、53型、54型、56型の結膜への感染により起こる炎症で、角膜炎を伴います。非常に感染力が強く、潜伏期間は8日~14日で、急に発症し、眼瞼の浮腫、流涙を伴います。また、耳前リンパ節の腫腫を伴い、角膜炎症が及ぶと透明度が低下し、混濁は数年に及ぶことがあります。EKCの原因であるアデノウイルスは、主として手を介した接触により感染するため職場、病院、家庭内などのヒトが濃密に接触する場所などで感染が拡大します。
効果的な抗ウイルス薬は存在せず、目やにや充血などの眼の炎症症状に対するステロイド点眼剤などによる対処療法や最近の混合感染が疑われる場合の抗菌剤の処方が中心となっています。
季節性インフルエンザは、A型およびB型インフルエンザウイルスの感染により発症し、世界中で繰り返し流行しています。重症化により、全世界で年間29万人から65万人が命を落とします。インフルエンザウイルスは突然変異を起こしやすく、毎年のように少しずつ抗原性が変化するために流行が繰り返されます。また数年~数十年単位で大きな変異を起こし、全く新しい亜型が出現することがあり、これは不連続抗原変異と言われて、パンデミックを引き起こす可能性が言われています。
複数の抗インフルエンザ薬が承認されている。多くの承認薬で薬剤耐性ウイルスの出現が報告されている。このような薬剤耐性と、大きな抗原性変異の出現の可能性から、新しい抗ウイルス薬開発が必要である。
デング熱は、デングウイルスが原因の感染症で、蚊が媒介する疾患です。デング熱は急激な発熱で始まり、発疹、頭痛、骨関節痛、嘔気・嘔吐などの症状が見られます。通常、発症後2~7日で解熱し、発疹は解熱時期に出現します。特に再感染時に重症化することがあり、まれに重症化してデング出血熱やデングショック症候群を発症することがあり、早期に適切な治療が行われなければ死に至ることもあります。
デング熱に対する特別な治療法はなく、発熱や痛みに対する対症療法が中心です。ワクチンが海外で承認されていますが、デング熱未感染者への接種で逆に重症化リスクが高まることが確認されており、WHOから注意喚起のPosition Paperが発表されています。
ヒトに感染するコロナウイルスは、風邪症候群の4種類と動物由来の感染である重症肺炎ウイルス3種類 (SARS-CoV, MERS-CoV、SARS-CoV-2)、計7種類が知られています。前4種は一般的な風邪症状を起こしますが、ほとんどの場合重症化はしません。重症肺炎ウイルス3種は、現在もSARS-CoV-2によるCOVID-19が世界中で猛威を振るっているように重症の呼吸器疾患等を引き起こします。
重症肺炎ウイルス3種に対しては、唯一、COVID-19に対して抗ウイルス薬・レムデシビルが承認されましたが、より効果的な抗ウイルス薬の開発・承認が切望されています。
ダウン症は、体細胞の21番染色体が通常より1本多い計3本(トリソミー)、あるいは少数ですが21番染色体の一部がトリソミーになることで発症する先天性疾患群である。身体的発達の遅延、特徴的な顔つき、軽度の知的障害が特徴である。年間1,000出生あたり1人に現れ、新生児にもっとも多い遺伝子疾患である。40歳以降にアルツハイマー病が高確率で起きることが知られています。
ダウン症は染色体異常であるため、現状根本的な治療方法はありません。スペインの研究チームにより、緑茶抽出成分(Dyrk1a阻害能を有する)がダウン症患者の認知機能を改善するという第2相臨床試験による研究成果が発表されています。
国際アルツハイマー病協会の 2015 年時点での推計では、世界中で約 3 秒に 1 人が新たにアルツハイマー病を含む認知症を発症しています。日本でも厚生労働省研究班の調査で 2012 年の時点で約 462 万人の認知症患者がおり、高齢化社会の進展に伴って今後ますます患者数が増えていくことが予想されています。認知症患者のおよそ半数を占めるとされるアルツハイマー病患者の脳内には、アミロイド βやタウ蛋白質が蓄積し、神経細胞死が起こることで、物忘れなどの症状が出現してきます。アルツハイマー病発症の原因は究明されておらず根本的な治療方法は確立されていせんが、近年、タウ蛋白質の異常凝集に対する治療法に注目が集まっています。患者脳で蓄積するタウ蛋白質は過剰にリン酸化されており、タウ蛋白質の過剰リン酸化と神経細胞死には密接な関係があると考えられています。
認知症の症状を一時的に改善する複数の薬が使われていて、これらの薬は、脳内の神経伝達物質を増加させることで一定程度の効果があるとされていますが、アルツハイマー病の根本的治療法は現在のところありません。